「BOPビジネス」という言葉を紹介する記事を見ると、時々あれっと思うことがあります。実践者ではない自分が偉そうにコメントするのも気が引けますが、自分の立場もそんなことも言ってられない段階に入ってきているようなので、一人の発信者として思うところを書いてみます。

「BOPビジネス」という言葉を使う時に、その言葉を使って何を伝えようとしているかを理解することが大事だなと感じています。日本語での「BOPビジネス」に関する記事を読むときに感じることは、非常に限定的な議論しかされていないということです。どいういうことか、この図が凄く分かりやすいです。

これはUNDPの包括的ビジネスのガイドラインから引用しているものですが、見て分かるように「BOPビジネス」は「包括的ビジネス」の部分集合として位置づけられています(右上)。「BOPビジネス」は企業によってBOPという消費市場向けに行われるビジネス、ということです。これは日本語でのソースで見かける「BOPビジネス」と言えるかと思います。閉塞した日本市場からBOPへ、BOP市場ではNGO等とのパートナーシップが大事、製品サービスにイノベーションを、そんな感じの内容です。

しかし、今世界では「BOPビジネス」を内包した「包括的ビジネス」という形で議論が進んでいるように感じています。企業が消費者市場としてBOP層と関わるのではなく、生産者としてのBOPという視点を重視し、生産から消費までのバリューチェーンの中で以下にBOP層を包括できるか(Inclusion)という視点にシフトしています。また、その概念に携わる主体も企業だけでなく、政府や国際機関のような公的アクターが企業のリソースを活用するという形で関わっています。企業視点でBOPビジネスの動向を追うのではなく、国際関係や公共政策、行政的な視点でこの動向をみるとその動きがよく分かります。

この動向をそれなりに追って来た自分の中で、『BOPビジネス』という言葉は「包括的ビジネス」とほぼイコールで理解していました。というか、UNDPは上図のようにすみ分けていますが、BOPビジネスの認識共同体の中では基本的には『BOPビジネス』=「包括的ビジネス」なんじゃないかなと理解しています。

正直何を今さらという感じもしますが、この日本での「BOPビジネス」の理解が、呪縛のように他の概念との接点を見失わせていないかという気がしているのです。例えばポーターのCreating Shared Valueなども、Nestleがバリューチェーン上の貧困農家とどのように関わっていくかという話であって、本質的には包括的ビジネスの延長に存在しています。貧困層のバリューチェーンへの包括、生産性向上に向けた投資、そのために外部のアクターと協働などなど。

別に何が「BOPビジネス」だという言葉遊びには全く興味はないのですが、議論が限定的だということに問題意識は感じています。BOPビジネスを単なる巨大消費者市場戦略として考えるのではなく、バリューチェーン全体を通じて貧困層をどう包括していくか、という視点に切り替えることで、もっと見えてくるものがあるのではないか。その見えてくるものが何かと言う話はまたおいおい書こうと思います。