前回の続きです。

「企業の役割と存在意義が変化、拡大してきている」ということで、企業という仕組み、市場と社会、人と組織という3つのレベルに分けて考えています。前回は企業という仕組みについて、「社会的価値の創造を経済性の観点から正当化する」ということが今後ますます重要になってくるのでは、ということを書きました。まだ他にも書きたいと思うことがありつつも、今度は一転、人と組織の視点を考えたいと思います。

 

BOPビジネスやサステイナビリティ関連のイニシアティブは、その派生プロセスにおいて社内のボトムアップの動きが非常に重要になると言えます。「社内社会起業家」という考えが欧米では一つのロールモデルとして浸透していますし、それを推し進める環境が整っているように思えます。社内社会起業家について、詳しい事例は関連する文献(これこれなど、この記事も好きです)に譲るとして、多くの企業人が「社会的価値の創出と企業活動を結び付けるか」ということに注力し始めていて、それらが今日「BOPビジネス」や「サステイナビリティ」の事例として華々しく紹介されているのです。前述した文献や記事の中の、SustainAbilityやSaatchi&Saatchiではこうした「社内社会起業家」が生まれる組織文化や環境等にもメスを入れた組織変革を行っていると推測されます。

 

ここでの大事な点は、「企業」としての論理と、「個人」としての論理の違いであり、その論理の違いを埋めるようなクリエイティブテンションの存在です。前回の記事でも書いた「既存の企業の仕組みの中で、社会的価値の創出に経済的なインセンティブを付与する」という考えは「企業」の論理に根差したものであり、「社会的価値の創出を経済性の観点から正当化する」という考えは「個人」の論理に根差したものであると考えます。

今回の大きなテーマである「企業の役割が拡大してきている」という主張について、この双方の論理に変化が起きていることが重要な根拠だと感じています。企業として、こうした社会的価値の創出に取り組むことに対する経済的インセンティブが明確に認識されるようになってきたことが前者の論理です。そして、後者として、多くの「個人」が社内社会起業家的なマインドを持ち始めていることが大きな変化であると感じています。

 

この「個人」の視点はこれまで私が出会った社内社会起業家の方たちから学ぶことが多かったです。BOPラボや仕事を通じて出会った方々、こうした個人の企業の中での振る舞いを見聞きしていると、そのアウトプットを企業としての経済性だけで評価する学問的な見方が非常に意味の内容に思えもしました。市場戦略といった視点も重要であることに変わりはないのですが、その背後にあるこうした複雑な組織行動を無視することはできないと感じています。

昼間の投稿で書いたピーターセンゲやオットーシャーマーなどの組織論者に共通していることは、機械的な組織からの脱却と、深いレベルにある個人の意志の開放だと理解しています。詳細は両著や本テーマの専門家に譲るとして、この変化は一つのパラダイムシフトとして広く認識されるようになったと言えます。今後もこうした変化が進むのであれば、今回の投稿で取り上げている人と組織という視点の重要性がさらに増すと考えています。

今回のテーマはもう少し掘り下げて考えたいことがたくさんあるのですが、今回はこのあたりで切ります。