「ビジネスは社会を変える力がある」という言葉について、皆さんどんな風に思っているのですかね?? このあたりのことを研究テーマにしていると、純粋な思いも、下ごころのあるマーケティングも横並びにしてこうした言葉を目にすることは絶えません。

ある人は「ビジネスは社会を変えることができると思うのです!!」と目を輝かせていうかもしれないし、ある人は「いや、そんなに甘くないよ」「普通のビジネスだって社会に必要とされているでしょ」と現実的な批判を加えるかもしれません。自分自身はどう思っているかというと、昔は目を輝かせていたけど、今はよくも悪くも落ち着いて物事を考えるようになった、という感じですかね。

 

ただ、思うのは「ビジネスは社会を変えることができる」と声を大にして言うことそのものに大きな意味があると思うのです。最近色々なところで言われていますが、企業と社会との関係性の中で、社会が企業に対してより多くを求めるようになってきています。守りから攻めへ、責任から共有価値創出へ、社会起業家精神など挙げればきりがありませんが、企業が積極的に社会的価値の創出に携わること、それ自体を求める動きがある。そして、この動きを牽引するのはやはり単純に人なんだと思うのです。

「ビジネスは社会を変えることができる」という思いを持つこと自体に、もし仮にそれが大きな勘違いであっても、意味があると考えています。というのも、これが企業に対する「期待」という新しい次元の社会的圧力となりえるからです。CSRの効果等で報告されるものに、従業員の忠誠度や、より優秀な人材の引きつけ等が挙げられることは広く受けいられてきましたが、今後もこうした動きは顕著になっていくでしょう。企業という枠組みを横に置いて考えるならば、これは社会を構成する個人一人ひとりが「社会的意義」を企業に求め出しているということだと考えています。社会の中で、個人は価値の消費者にも生産者にもなっていて、これまで消費者や企業の外部から受けていた社会的圧力が、今度は企業の中から生まれてくるようになるわけです。CSRなど企業視点の話は一端置いておいて、あくまで社会的圧力という点で考えています。

こうした意識が現状日本でどの程度芽生えているかという問題もあります。もしかしたら、企業に「社会的意義」を要請する個人というのは欧米に比べると少ないかもしれません。ただ、それならばなおさらに「ビジネスや社会を変えることができる」という思いを持つ個人が増えることに意味があるのではないか。

 

そんな風に思っているわけで、私自身は「ビジネスや社会を変える」といった言葉に対して非常にポジティブに受け止めています。社会構造を変えていくという意味で、こうした思いを持つ人が増えることが大事だと考えます。個人的にも、どんなに言葉や態度を変えようとも、どこかでこれを信じ続けているからこそ今の研究テーマを長年扱っているわけです。しかし一方で、言葉のレベルに留まらず、そこから一歩二歩深掘りして考えていくこと、実行していくことが重要なのだと思います。自戒も込めて。社会的圧力という意味ではこの言葉には意味があると書いてきましたが、じゃあ本質的にそれをどう実現していくのかというのはまた別の問題ではないか。言葉やうわべのかっこよさに踊らされないように、物事を考えていきたいです。