修論のテーマですが、一言で言うと「ドリシテのビジネス生態系に関するケーススタディ」ということになる予定です。もちろん、まだ色々ブレスト中の部分もあるのですが、9月から始まるインターン中のインプットとアウトプットを最大化するためにも、頭の整理を行っています。

ちなみに、ケーススタディって修論としてはあんまり賞賛されないようですが、他の社会科学的な方法(統計とか)を使ったところでこじ付け的な研究にしかならなそうだったので、割り切って質の高いケーススタディにすることにしました。

テーマ設定の背景について少し。BOPビジネス関連の研究でよく出てくるのが「BOP(包括的)ビジネスのビジネスエコシステム(生態系)」または「BOPビジネスネットワーク」などと呼ばれるBOPビジネス特有のステークホルダーとの関係性が如何にビジネスの持続可能性と拡大可能性にとって重要かというところに焦点を当てた研究です。「ビジネスエコシステム」という考え方自体は、それこそプラハラードの最初の論文などでも取り上げられてきたキーワードでもあります。

 

ドリシテを選んだ背景には、ドリシテがこのビジネス生態系の概念を適用するにとてもふさわしい3つの特徴を持っていたからです。(もちろんとても恵まれたことに機会があったからという外的な理由もありますが。)

1つ目は、ドリシテのハイブリッドモデルについてです。ハイブリッドモデルとはアショカやAl Hammond等が提唱している考え方で、営利組織と非営利組織をそれぞれに立ち上げ、それらを組み合わせて事業を拡大させる、もしくはバリューチェーン上での競争力を高める、というものです。昨日のブログで取り上げた、Ted Londonの援助機関と企業との連携についての論文も同じような視点で描かれています。ドリシテも営利部門と非営利部門を持っており、それを巧みに組み合わせて農村地域での拡大とバリューチェーンの競争力強化を行っているのではないか考えています。。

2つ目は、多国籍企業との連携についてです。ドリシテのHPからだけでも、マイクロソフト、ネスレ、ノバルティス等の企業とすでにパートナーシップを結んでいます。日本企業ではリコーとパートナーシップを組んでいるようで、今年の初めにドリシテが来日した際にも取り上げられていました。ドリシテにとって、これらの企業との連携がどのような意味を持っているのか、またBOPベンチャーと多国籍企業が連携するまでのプロセスについて、これからじっくり調査していきたいと思います。

3つ目は、政府との連携についてです。ドリシテはインドの官民連携イニシアティブであるNational Skill Development Corporationと共同出資でDrishtee Skill Development Centerというジョイントベンチャーも立ち上げています。この取り組みはまだ始まって数年で結果がどの程度出ているのかは未知数ですが、農村地域での事業の拡大、バリューチェーンの競争力強化にこうした政府との連携を上手く取り入れている可能性もあります。また、そもそもドリシテが最初に農村地域でネットワークを拡大させた際のビジネスモデルは非営利での電子政府サービスの提供だったはずで、もしかしたらそこに拡大の秘密があったのではないかという仮説もあります。

これらがドリシテを中心にそえたBOPビジネス生態系の特徴で、それがドリシテの成長に大きく貢献しているのではないかと考えています。こうした興味関心でドリシテをケーススタディの対象として選んでいるわけですが、特に以下のリサーチクエスチョンについて深く調べてみたいと思っています。

①    ドリシテがハイブリッドモデルを選択した理由はなにか(Why)、それがいかにして農村地域での事業拡大に機能してきたか(How)

②    ドリシテと多国籍企業との連携はいかにして生まれ(How)、なぜそのパートナーを選んだのか(Why)、またその戦略的意義は何か(Why)

③    ドリシテと政府との連携はいかにして生まれ(How)、またその戦略的意義は何か(Why)

④    上記三つの問いを踏まえて、ドリシテのビジネス生態系はどのように発展してきたか、またこれからどのように発展していくのか(時間軸を置いたHow)

これらの質問について、ぶら下がる仮説立てと検証をインターンで働く間に可能な限りやっていきたいと思います。また、その際の分析の枠組みとして、個人と組織と社会という3階層のビジネス生態系に分けて整理していきたいと考えています。長くなってきたので、この3階層のビジネス生態系については次回の投稿に回します。

 

最後に、これらは修論用に自分の興味関心を落とし込んでいるものですが、自分の究極的な興味関心は、こうしたビジネスの成長と社会的ニーズへの対応が重なり合う領域で様々なアクターが同じ方向を向いた事業開発を行っていくことができれば、それはBOPに限らず様々な分野で応用の効くモデルになるのではないか、そこに「新しい企業観」があるのではないか、というものです。だからこそ、BOPだけでなくCSRやSRI、社会的企業などの話にも結構手を伸ばしていたりします。そのあたりもまた今度書いていきたいと思います。