ドリシテのインタビュー記事

インターン先のドリシテについてのインタビュー記事がネットに上がっていたので、これをネタにブログを書きたいと思います。

Drishtee Under the Skin

2) What is the current capacity in kiosks / How many kiosks you have per category: Health Kiosks, Education Kiosks, Banking & Micro finance kiosks, Rural retails points?

We have a total of 25 health Kiosks, 350 Education Kiosks, 1000 Banking & Micro Finance and nearly 13000 Rural Retail Points mapped on the network.

らしいです。色々やっているように見えて数字としてはこんな感じになるようです。350あるというEducation Kioskですが、これはCEEPという事業に含まれるものがほとんどのはずです。こうした教育事業はマイクロ起業家の数と比較すると少ないようですが、ドリシテの主要な収益元となっている事業の一つだそうです。

3) In which roles Drishtee acts, or does Drishtee act in all of these roles: 1) Distributor of products and services and knowledge, 2) Enabler of Scaling (product in one village tested successfully  product implemented to hundreds or thousands villages), 3) Consultant of product or service adaptation, 4) Channel to co-create of innovations with local actors. Drishtee as a group acts in all 4 roles.

The for-profit organisation works on # 1&2 while the Foundation works on # 3&4

この質問の意図は僕がこっちで調べたい研究テーマの一つであるハイブリッドモデルに関するものです。ドリシテにとって農村のコミュニティとの信頼関係を築き、そこから有能な起業家を見つけ育てるまでのプロセスと、その起業家を介してコミュニティと市場を繋ぐプロセスとではDrishtee FoundationとDrishtee Development Community Limitedという異なる事業主体を使い分けています。前者はNGO、後者は営利企業に該当するのですが、両者は実態としては同じ組織の中の二つの部門として機能しているものと理解しています。これが具体的にどのように機能しているのか、ハイブリッドモデルがドリシテの農村地域での拡大にどの程度重要な役割を果たしたのかについて、もう少し詳細なデータを集めれればと思っています。

4) Are there any examples yet, which demonstrate that an international Company has successfully implemented the product or service to the Drishtee’s ecosystem?

この質問の答えは長くなるので引用しませんが、具体的な企業名をあげてパートナーシップのパターンを紹介しています。インタビューと僕の理解とを合わせると大きく分けて3つのパターンがあるようです。一つはドリシテの既存の流通網にパートナー企業の製品サービスを乗せる、もしくはそのためのパイロットを一緒に行うパターンです。二つ目はその前段階として、製品開発やビジネスモデルを組むための情報収集といった市場調査を協働で行うパターンです。三つ目は日本からもリコーの名前が挙がっているように、コミュニティの視点で0からビジネスを作り上げるというものです。いずれのパターンでも農村地域に広く伸びたネットワークとコミュニティの中に深く入り込んでいるドリシテが生態系のキーストーンとなっています。

 

インタビューからは離れますが、今のところの修士論文の主張としてはドリシテのケースを題材に、①ハイブリッドモデルのように純粋な営利企業とは別のモデルでスケールすることが可能、②外から参入する企業はこうした特殊な企業をキーストーンとして認識して適切なパートナーシップを結ぶことが重要、③そのためには…という感じになるのかなと思っています。もちろんあくまでまだ仮説なので、これをどう検証していくかというのが論文としての課題、なのかなと。

「論文を書く」ってなると面白い話も全然面白く見えないから面白い笑 これからはブログでは論文のネタからは少し外れて、もう少し面白い話を書きたいと思います。

新しい方法で社会を市場化する

インターンが始まってすでに三週間が経ってしまいました…インターンの仕事もそうだけど修論大丈夫だろうかと迫りくる文字通りのデットラインにおびえております。今週は日本からのゲストを迎えて連日のワークショップなのですが、4つのプレゼンを含む一通りのタスクは今日で終わり、明日は農村地域への調査に行ってきます。やっぱり日本語よりも英語のディスカッションの方が将来的には向いているのではないかと自身の受けた大学教育に改めて感謝している次第です笑

そう、ブログでドリシテのことを紹介したいと思ったものの、何となく色々書きにくいこともあり、書きたいことはあるのですが、もう少し機会を見計らって書きたいと思います。

 

ということで、何を書こうと思ったのですが、藤井さんの最近のブログの内容がとても面白いなと思ったので、今日は企業にとっての「ソーシャルイノベーション」や「社会起業家精神」って何なのかということを考えてみたいと思います。

前にもちょっと書いた通り、「ソーシャル」は何かという話にはあまり興味がないのですが、藤井さんのブログの「新しい方法での社会の市場化」というのはとてもしっくりきて、「そうそう、そうなんだよ」と思いました。偉そうですいません…笑 (藤井さんの書籍はもう何年も前から読んでいたのですが、これまではこうしたテーマとは一線を画していたように思っていたので尚更興味深く拝見しています)

この辺りのテーマを研究したい(研究なのか仕事なのか分からなくなってきたけど)と思ったのは、企業が社会的課題の解決に取り組むための経済的なインセンティブをどう作れるか、社会へのインパクトを企業の合理的な意思決定にどうすれば組み込むことができるかということを学部生のころに考えていたからです。その時の興味を言いかえれば今回の「新しい方法での社会の市場化」であり、その新しい方法とは何だろうというのが今の研究テーマのような気がしています。

途上国低所得層という市場化されていない社会を市場化していくための「新しい方法」として着目しているのがハイブリッドモデル、社会的企業とのパートナーシップを中心としたビジネス生態系に関する研究です。通常のビジネスではリーチできない所得層、遠隔地域、機会の欠如にある人々にリーチするためには、通常のビジネスの外に半身を置かなくてはいけないかもしれない、その外にいるアクターと手を結ばなくてはいけないかもしれない。それは分かるけどじゃあどうやって、というところをまとめていくのが取敢えずの修論の予定です。今ドリシテでもこの辺りの話のお仕事に携わらせてもらっており、昔の話やこれからの話も聞けて本当に勉強になります。ブログで書けないことも、最終的には修論に載せれればと。

ちなみに「途上国低所得層という市場化されていない社会を市場化していくための「新しい方法」」という一文を凄くネガティブに捉える人もたくさんいるのかもしれませんが、そこについても今度、自分の思うことやドリシテのスタンスについて書いてみたいと思います。

 

そう、それに関連して最近自己紹介とかで使っているフェーズが自分の興味を象徴しているなと再認識しました。

「Ive been interested in how corporates can get into the social entrepreneurs field as a long term strategy. Ive been researching inclusive business at the base of the pyramid, and Ive worked for evaluating corporate social responsibility performance of Asian companies. So now, I would like to see what can be the bridge between social sides of corporation and  social entrepreneurship on the ground, and what the convergence of these two movement create as a form of business and a way to solve societal issues」

こうしてドリシテでインターンしていたり、BOP系のことをずっと研究テーマとして扱って来たわけですが、元々「企業が社会的課題の解決に取り組むための経済的なインセンティブをどう作れるか、社会へのインパクトを企業の合理的な意思決定にどうすれば組み込むことができるか」というところに関心を持っていたため、数年間SRIアナリストのお手伝いをさせていただいていた背景があります。自分にとって、やはりこの二つは切り離せないもので、この二つの間に「新しい方法で社会を市場化する」ためのヒントが隠されていると思っています。

 

「ソーシャル」な「ビジネス」のブランドイメージ?

インターン先でソーシャルメディア関連のお仕事に参加していることもあって色々勉強しているのですが、関連していわゆる「社会的企業」のブランドについて、そもそも「ソーシャル」って何なのかについて考えていることをメモしておきます。

 

最近は、今のインターン先は「どんなイメージで認知されるべきか」ということを考えています。例えばNPOがソーシャルメディアでファンドレイジングをするケースは多々ありますが、極端な話、今のインターン先では「私達が探しているのは寄付ではない、ビジネスパートナーだ」、「私達にとって貧しい人達は援助の対象ではない、ポテンシャルの高いビジネスパートナーだ」くらいでもいいのではないかと思っております(個人的な見解です)。ちなみに、このブランディングというところで言うと、Acumen Fund等はやはりうまくて、巧みに「援助から投資」、「金銭的なリターンからハイブリッドリターン」で差別化を図ってきたんだななんて思ったりもします。

 

よく「社会的企業」「社会起業家」「ソーシャルビジネス」とかの言葉について、その定義は何なのかという議論がありますが、僕自身はそれ自体あまり意味のある議論のようには思っておりません。(もちろん法人格の法的な定義や政策支援の対象の要件、という意味では定義が存在して、その議論は面白いと思っています)

定義よりもこうした「ソーシャル」という形容詞がブランディングとなって企業の外部のリソースを活用することができていること自体が注目すべき点のように思います。

昔に読んだヨーロッパのサードセクターについての本の中で社会的企業の「ハロー効果」についての記述が面白かったのですが、「社会的」企業が取り組む社会的課題には「社会的ハロー効果」がかかっており、そこに取り組むことを認知する際にポジティブなバイアスを生むというような話でした。「ソーシャル」という形容詞が付くことで、それを認知する際にポジティブなバイアスが生まれ、これまでアクセスできなかったリソースにアクセスできる、というイメージです。例えばこれまで「ソーシャル」を担ってきた企業以外のアクターとの連携、「ソーシャル」にポジティブなバイアスを持っているお金や人材の流入、等です。

これをブランディングという言葉で括ってよいのか分かりませんが、世の中で「ソーシャル」という形容詞に対して何らかのポジティブなバイアスがかかっていることそれ自体を認めることが重要で、そのポジティブなバイアスがいわゆる「社会的企業」「社会起業家」「ソーシャルビジネス」の鍵なのではないかと思っております。それを「(普通の企業の)私達の事業だって社会に貢献しているじゃないか」というもっともな反応で切り捨ててしまうのではなく、世の中がそれをどう認識しているかという立場で理解し直すことが必要なのではないかと。(そういう意味でも先進的な「普通の企業」は社会的企業に負けないように必死のようです)

 

もちろん、だからと言ってじゃあ社会的課題に取り組んでいるイメージさえあれば良いのかとか、それを客観的に評価する仕組みはなくていいのか、とかそういうことではなく、それらは大事な前提として持った上でもなお、この「ソーシャル」という形容詞が大事な意味を持っているんだろうなと思います。この辺り、ブランド作りの専門家の視点での「社会的企業」という切り口で話を聞いてみたいと思います。

インターンが始まって一週間

が経ちました。この一週間は基本的には導入ということで、ドリシテについてのレクチャーを受けたり、内部資料をいくつかもらって分からないことを聞くというのが主な内容でした。後はいよいよ来週からのタスクの内容についてのディスカッションです。

僕はDrishtee Skill Development Centerという新規事業に所属し、主に三つのプロジェクトに参加する予定です。DSDCは近年始まった新規事業でまだパイロットフェーズです。農村地域での職業訓練を行い、その訓練の授業料を月額で徴収するモデルのようです。元々、DrishteeはCEEPのような教育事業を持っていて主要な収益源となっているのですが、それとは別にDSDCは職業訓練に特化して立ち上げています。またDSDC自体がインド政府が官民連携型の職業訓練イニシアティブとして始めたNational Skill Development Corporationとの連携で行われています。私はDSDCに所属しながら、主に①DSDCの農村地域でのプロモーション及びコミュニティエンゲージメント、②日本企業を中心としたDSDCのパートナー開拓、③Drishteeのソーシャルメディア戦略立案と実行、という3つのプロジェクトに参加しております。まあ、カッコよく書いてはいますが所詮は2カ月のインターンでできることがメイン。しかし、されどプロジェクトの一員ということで、自分が出せるだけのバリューを出すべく奮闘しております。

 

ちなみに、Drishteeに来てみてのパッと見での第一印象ですが、「さすが」といったところです。社内公用語はもちろん英語、従業員も僕のいるオフィスだけで50人を超え(各州支社合わせて全体で150人弱くらいらしい)、普通の企業と何ら変わりありません。まあ、当たり前といえば当たり前ですが。その実態についてはまたこれから見極めていきたいと思います。(なんか偉そうな書き方ですいません…笑)

Drishteeの事業については紹介を受けている範囲ではこちらの公開資料にあるような4Cモデルが中心で、新しい学びはCommunity EngagementをDrishtee FoundationというNGO(非営利部門)が、CapacityをDrishtee Skill Development Centerが、CapitalとChannelをDrishtee Development  Community Ltd(つまりDrishteeのメインとなる営利部門)が担当するという概略図です。ただ、これ自体もやはりこれまでDrishteeがやってきたことを今一度統合整理していきたいということでできた新しいコンセプトのようです。修論に繋がる個人的な興味としてはこうした4Cモデルを唱える前の時点で、DFがDDCLの事業拡大にどのように関わっていたかというところです。BOP/ソーシャルビジネスの世界でハイブリッドモデルとよく言われますが、Drishteeも農村で適切なマイクロ起業家パートナーを探し、育成し、バリューチェーンに組み込むまでのコストを(つまり4Cで言うところのCommunityとCapacityの部分)非営利部門がカバーしているのではないかと考えています。この辺りの検証はまた機会を見計らって聞いてみたいと思います。(ブログに載せれるかは分かりませんが…笑)

後はもう一つ研究の大事なテーマである海外企業との連携についてですが、これはまたの機会に書きたいと思います。

ちなみに、ここのブログで扱っている内容はあくまで公開資料となっている情報をソースに、僕の考察を綴っているということで、それ自体がDrishtee自身の意図であるかどうかはまた別の話ということでご理解いただければ幸いです。

 

こんな感じで時々ブログを更新していきたいと思います!!

ドリシテのビジネス生態系に関するケーススタディ

修論のテーマですが、一言で言うと「ドリシテのビジネス生態系に関するケーススタディ」ということになる予定です。もちろん、まだ色々ブレスト中の部分もあるのですが、9月から始まるインターン中のインプットとアウトプットを最大化するためにも、頭の整理を行っています。

ちなみに、ケーススタディって修論としてはあんまり賞賛されないようですが、他の社会科学的な方法(統計とか)を使ったところでこじ付け的な研究にしかならなそうだったので、割り切って質の高いケーススタディにすることにしました。

テーマ設定の背景について少し。BOPビジネス関連の研究でよく出てくるのが「BOP(包括的)ビジネスのビジネスエコシステム(生態系)」または「BOPビジネスネットワーク」などと呼ばれるBOPビジネス特有のステークホルダーとの関係性が如何にビジネスの持続可能性と拡大可能性にとって重要かというところに焦点を当てた研究です。「ビジネスエコシステム」という考え方自体は、それこそプラハラードの最初の論文などでも取り上げられてきたキーワードでもあります。

 

ドリシテを選んだ背景には、ドリシテがこのビジネス生態系の概念を適用するにとてもふさわしい3つの特徴を持っていたからです。(もちろんとても恵まれたことに機会があったからという外的な理由もありますが。)

1つ目は、ドリシテのハイブリッドモデルについてです。ハイブリッドモデルとはアショカやAl Hammond等が提唱している考え方で、営利組織と非営利組織をそれぞれに立ち上げ、それらを組み合わせて事業を拡大させる、もしくはバリューチェーン上での競争力を高める、というものです。昨日のブログで取り上げた、Ted Londonの援助機関と企業との連携についての論文も同じような視点で描かれています。ドリシテも営利部門と非営利部門を持っており、それを巧みに組み合わせて農村地域での拡大とバリューチェーンの競争力強化を行っているのではないか考えています。。

2つ目は、多国籍企業との連携についてです。ドリシテのHPからだけでも、マイクロソフト、ネスレ、ノバルティス等の企業とすでにパートナーシップを結んでいます。日本企業ではリコーとパートナーシップを組んでいるようで、今年の初めにドリシテが来日した際にも取り上げられていました。ドリシテにとって、これらの企業との連携がどのような意味を持っているのか、またBOPベンチャーと多国籍企業が連携するまでのプロセスについて、これからじっくり調査していきたいと思います。

3つ目は、政府との連携についてです。ドリシテはインドの官民連携イニシアティブであるNational Skill Development Corporationと共同出資でDrishtee Skill Development Centerというジョイントベンチャーも立ち上げています。この取り組みはまだ始まって数年で結果がどの程度出ているのかは未知数ですが、農村地域での事業の拡大、バリューチェーンの競争力強化にこうした政府との連携を上手く取り入れている可能性もあります。また、そもそもドリシテが最初に農村地域でネットワークを拡大させた際のビジネスモデルは非営利での電子政府サービスの提供だったはずで、もしかしたらそこに拡大の秘密があったのではないかという仮説もあります。

これらがドリシテを中心にそえたBOPビジネス生態系の特徴で、それがドリシテの成長に大きく貢献しているのではないかと考えています。こうした興味関心でドリシテをケーススタディの対象として選んでいるわけですが、特に以下のリサーチクエスチョンについて深く調べてみたいと思っています。

①    ドリシテがハイブリッドモデルを選択した理由はなにか(Why)、それがいかにして農村地域での事業拡大に機能してきたか(How)

②    ドリシテと多国籍企業との連携はいかにして生まれ(How)、なぜそのパートナーを選んだのか(Why)、またその戦略的意義は何か(Why)

③    ドリシテと政府との連携はいかにして生まれ(How)、またその戦略的意義は何か(Why)

④    上記三つの問いを踏まえて、ドリシテのビジネス生態系はどのように発展してきたか、またこれからどのように発展していくのか(時間軸を置いたHow)

これらの質問について、ぶら下がる仮説立てと検証をインターンで働く間に可能な限りやっていきたいと思います。また、その際の分析の枠組みとして、個人と組織と社会という3階層のビジネス生態系に分けて整理していきたいと考えています。長くなってきたので、この3階層のビジネス生態系については次回の投稿に回します。

 

最後に、これらは修論用に自分の興味関心を落とし込んでいるものですが、自分の究極的な興味関心は、こうしたビジネスの成長と社会的ニーズへの対応が重なり合う領域で様々なアクターが同じ方向を向いた事業開発を行っていくことができれば、それはBOPに限らず様々な分野で応用の効くモデルになるのではないか、そこに「新しい企業観」があるのではないか、というものです。だからこそ、BOPだけでなくCSRやSRI、社会的企業などの話にも結構手を伸ばしていたりします。そのあたりもまた今度書いていきたいと思います。

Ted Londonの論文、援助機関と企業の協同について。

全く更新していなかったブログですが、インドに来て時間ができたので少しづつ再開していきたいと思います。基本的にはインドでのインターン先での学びや、修論に関連した話を徒然なるままに書いていきたいと思います。

今日はさっき読んだTed Londonの新しい論文について。
Using the base-of-the-pyramid perspective to catalyze interdependence-based collaborations

途上国の低所得農家に対して、援助機関と企業がお互いのゴールに向けて支え合う関係を築いていくことが大事という内容でした。援助機関が行うイニシアティブと企業によるイニシアティブをそれぞれの特徴ごとに分けて整理した上で、互いの強みと弱みを補完しながら、それぞれのゴールを達成していくための提案がなされています。
 
論文で何のケースを取り上げているのかが載っていなかったのですが、これを読んでパッと頭に浮かんだのは、Coca-ColaとTechnoserveとゲイツ財団が行った、アフリカでの農家支援の取り組みです。これもまさに、広い意味での援助機関とNGOがCoca-Colaという企業のバリューチェーンに農家を組みこんでいくために支援を行っている事例で、面白いなと思っていました。

Ted Londonの論文でも取り上げられていますが、個人的にはこういった援助機関と企業が長期的な視点でお互いのゴールの達成に向けて協力することについて、合意に至るまでのプロセス、プロジェクト中の共通の目標指標の設定の状況などに興味があります。どうなっているんでしょうね、ご存知の方は教えて下さいませ。

ちょっと話は飛躍してしまいますが、来月からインターンでお世話になるDrishteeという会社も、官民連携型の人材育成に取り組んでいます。その現状などはこれからインターン中に修論用の調査内容として調べてくる予定ですが、そこでもこのTed Londonの論文の内容が少し生きてくるのではないかなと期待しています。

 

少年、眼鏡が逆さまだぞ。

少年、眼鏡が逆さまだぞ。

The Emerging Global Public Domain

ジョン・ラギーの「Reconstituting the Global Public Domain」という論文のプレゼンがあるので色々読みなおしているのですが、このあたりの話はやはり面白いなと思います。ラギーというと人権関連のラギーフレームワークが有名ですが、この論文の主張は7年近くたった今でもやはり響くものがあります。

This article draws attention to a fundamental reconstitution of the global public domain — away from one that for more than three centuries equated the ‘public’ in international politics with sovereign states and the interstate realm to one in which the very system of states is becoming embedded in a broader and deepening transnational arena concerned with the production of global public goods. One concrete instance of this transformation is the growing significance of global corporate social responsibility initiatives triggered by the dynamic interplay between civil society actors and multinational corporations.

この冒頭については以前触れたことがありますが、やはり面白い。これまで国が担っていた公共財の生産を、企業や市民社会組織などの国家以外のアクターも担っていくようにあるという話です。よく「CSRは結局イメージ戦略でしょ」と聞きます。もちろんそれはそうなんでしょうけど、そこで思考停止に陥ってはいけないような気がしています。

この論文や国際関係の話で言われていることは、企業、国家、市民社会の間に重複する部分がより顕著に表れ始めたことによるグローバルガバナスの変化です。企業という一領域を取っても、新しい会計基準の設定、格付け機関の拡大、認証制度など、「企業の権化」「企業による企業統治」が進行しています。近年ではESGやサステイナビリティ、統合報告などの動きもさらなる高まりを見せています。

 

こうした話に関連するのですが、結局のところ自分の関心は「これからの企業はどうなっていくのか」というところに落ち着きます。元々BOPビジネスやCSRに興味を持ったのも、「企業という大きな構造をどうやって社会価値の創出と結び付けるか」という問題意識からでした。最近はこの原点に立ち戻り、抽象的な部分をまた色々と考えているわけです。関連分野を研究領域にしていて分かったことは、「社会的価値の創出を経済性から正当化する」という側面については概ね合意形成がされている、そのための手段についても議論がかなり進んでいるということかなと思っています(ざっくりですが)。

そうした時に、頭に浮かぶ問いがこの「これからの企業はどうなっていくのか」という問いです。今日もどこかの記事で米国で起きているBenefic Corp拡大の動きがついにNYで正式な法形態として認められたと伝えていました。(こうした企業以外の法人形態についての議論は色々なところでされているのでこれも一度整理したいなと思っています) 別に企業や現存している仕組みが変わると言うつもりはありません。ただ、「企業と社会に広く共有される価値の創出」(ラギーのPublic Goodsはそういうことだと理解しています)を行っていく際に、企業、国家、市民社会との領域が重なり合う部分に、新しい何かがあるような気がしているのです。

その一つとして、今度ブログで書きたいのがUnilever財団の設立についてです。財団に限った話ではないですが、企業と社会的アクターを繋ぎ、両者の戦略的意図に立って共有価値を創っていくモデルへのヒントが詰まっているというな気がしています。次回はそんなモデルについて、今考えていることを書いてみたいと思います。

「天下り」とイントラプレナー

って、ものすごいタイトルですが。 今日大学院の行政学の授業で人事院の人が来て、日本の行政改革周りの話をして下さいました。色々あったのですが、その中で昨今の「天下り禁止」による弊害についての話があったので、思うところを書いてみます。

今日問題になった話は「天下り禁止」ということばかりが先行して、健全な労働市場の流動性が確保されなくなってきているということでした。関連報道が大きく取り上げられ、天下りを取り締まる動きが強まる一方で、優秀かつ高い志を持つ人々がその弊害を被っているという話です。ちなみに、今回の話は、あくまで授業の中で非公式に聞いた、程度の情報ですのでご了承ください。

天下りの問題は置いておいて、個人的には日本の労働市場の流動化の促進、特に企業、政府系機関、NPOという形での人材交流が活発になれば面白いのになと思うことがあります。いろんな人と話していてもその問題意識を持たれいている方はたくさんいるようですね。

そんなかんなで、今日の天下りの話ですが、官僚での経験やそこで培ったネットワーク、これらを民間企業で活かしていきたい、そう思う人は少なくはないはず。ただ、そんな人達がこうした天下り抑制の動きの中でうまく動けなくなっている側面があるそうです。今まで「天下り」について深く考えたことはなかったのですが、これはなるほど面白い指摘だなと思いました。同時に、非常に残念な気にもなりました。

 
「官僚」と呼ばれる方たちの中で、本当に素晴らしい志を持って活躍されている方がたくさんいることも知っています。本当に頭が下がる思いです。

自分の研究の一つのテーマとして、組織の中にある、また組織の壁を超えた個人レベルでのネットワークの重要性があります。昨日の日本総研のセミナーでも取り上げられていた、「ソーシャルアン/イントレプレナーの生態系」というものですね。組織と個人という異なるレベルの相互関係を考えると、今まで見過ごしていた側面や可能性に目を向けることができると考えています。

今の「ソーシャル」の動きを推し進めているものは、「個人の組織からの自由化」なんじゃないかなと思っています。なんだそれはというのはまた今度ゆっくり書きますが、もしこの自由化というのが「官僚」組織にも起きていくのであれば、それは非常に面白いことにつながるのではと感じています。現地こうした動きが起きている場所も知っています。本当に可能性を感じます。

しかし、今回の天下りの話というのは、確かにこうした動きを抑制して、自由意思のある個人を一つの組織にとどめるような弊害を生み出しかねない気がしました。このテーマを詳しく調べたわけではないので現実と懸念が少しかい離しているかもしれません。今度官僚の知り合いの方に色々聞いてみたいと思います。

「超資本主義」を読んで

ロバート・ライシュの「超資本主義」を読みました。CSR系では必読書??の一つとのことですが、これまで読まず…反省しております笑 以下、読んで感じたことをつらつらと。

消費者と投資家が絶大な力を行使する超資本主義。消費者は多様な選択肢から商品を選択する反面、過剰な競走状況を形成、投資家は企業に過酷な利益追求を行っていく。その結果、企業はあらゆる施策を通じて対応、時にロビー活動への巨額の資金投入を通じて政策への影響を強め、民主主義を脅かす。この侵攻を食い止めるにはまず民主主義と資本主義の境界線を見極めなくてはいけない。また、CSRへの賞賛や市民社会の批判の矛先も、この境界と照らし合わて再考する必要がある。このあたりが主旨かなと思います。

面白いなと思ったのは、企業の人格化の否定、です。今だに多くの人々が企業があたかも「人」であるかのように期待をしている。企業とはあくまで株主価値の最大化、利益の追求を目的としたものでしかないし、それを認めることが重要。そこから資本主義と民主主義の境界を見極める作業が始まるということだと理解しています。

 

特に頭の中の整理をしているわけでもないのですが、本著では語られていない、けれども個人的に大切だと思うことをいくつか挙げて、本著の内容と照らし合わせていきたいと思います。

一つ目は、超資本主義のルールを変える消費者と投資家の台頭についてです。「社会的消費者」というと抽象的ですが、その先にある「消費者による企業を淘汰する投票」という姿を見ている人、企業が増えてきているなと感じています。単なるマーケティング戦略を超えて、市民への啓発的な側面を身に付け、今後の社会に必要とされる企業として選んでもらえるよう努力する。その際の「社会的」の捉えからによっては、この超資本主義のルールを変えるだけの可能性を持っているのではないかと感じています。

また投資家についても、SRIなどの議論は非常に限定的なように感じました。社会的投資についても、既存の株式市場にESG要素を統合するだけでなく、NPO金融やインパクトインベストメン、いわゆる「ソーシャルビジネス」ト等の潮流を含めた議論が必要になってきているように感じています。「投資家」に多様性が生まれてきたこと、その一部にはある種民主的なプロセスを資本主義に統合しようとする向きもあり、その点ではライシュの議論とは相反する部分のような気がしています。この新しい消費者と投資家の台頭についてライシュはどう思っているのですかね??

 

二つ目は、企業という組織体だけでなく、その中の個人と組織のダイナミックさをどうとらえるかという点です。ライシュは企業を株主価値の最大化、営利追求を目的としたものとして描き、その人格化を否定しています。しかし、その中に存在する個人や組織の人格を無視して、企業の目的と均一化してしまうことは議論の本質を得ているのかというと、私はそうではないと考えています。

こうしたCSR等の話では、資本主義というStructureと、その中のAgentとしての企業という構図に成りがちですが、私はさらに、Structureとしての企業とAgentとしての個人という多層性が存在していると感じています。普通の人からしたらこんなことは当たり前なのですが、「頭のよさそうな」議論になればなるほどこの視点は抜け落ちていくような印象があります(あくまで印象です…)。個人は企業とは時に違うロジックで動いていて、そのロジックと企業のロジックをどう折り合いをつけているのか、このあたりの視点は超資本主義というテーマにおいても重要だと考えています。

 

なんか、書きたいことは他にもたくさんあるのですが、今日はここまでで。また後日続きを書きます。

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